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◆Update:2008年10月23日 |
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国道289号線甲子峠 |
■福島県白河市〜甲子温泉(福島県西白河郡西郷村) ■登山道の国道標識 ■廃道となるR289甲子道路 |
■撤去された標識 平成20年(2008年)9月21日、甲子峠の分断区間を解消する目的で建設が進められてきたR289甲子道路が開通。甲子峠は甲子トンネル(L=4345m)で通り抜けられるようになった。このため登山道経由のR289甲子峠区間は国道指定を解除され 、登山道に設置されていたR289国道標識はすべて撤去されたとのこと。(Wikipediaによる) さすがに大阪から福島県は遠いため、旧道になってから現地を訪れる機会がない。そのため当ページに記載している記事は、登山道が現役国道であった平成10年(1999年)取材のデータ・写真のまま、現役時代のみ記載している。いずれ機会があれば取材して来るが、いつのことになるか・・・。 |
◇登山国道289号線 |
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2つある分断区間の東側となる甲子峠の分断区間は、地図上においては、福島県下郷町側は甲子峠までがR289として指定されており、国道を示す赤線は峠の所で途絶えている。その先、峠から甲子温泉までの間は点線で示された登山道で結ばれている。甲子温泉からは再び赤線が現れ、R289として福島県白河市へと続いている。 この地図上で示された点線区間は、巷では『点線国道』とも言われる(地図上での)国道となっている。この点線は、地図上における道路の分断区間において多く見受けられ、人が通行可能かどうかを問わず登山道かそれに類する道が存在していることを示している。実際の道は、人一人が歩くことが出来れば上等な方で、道筋が残っているならまだしも草木に埋もれてルートすら発見出来ない場合もある。当然、バイクや車が走ることなど不可能だ。 甲子温泉から甲子峠に向かう道は登山道として整備されている。道筋もしっかりとしており、見失うことはまずないだろう。当然のことではあるが、多くの登山道同様、甲子峠の登山道もバイク・車の通行が不可能な登山道なのである。登山道なので、『←峠○km』とかいう距離を示す案内看板のような物はあるだろうが、道でよく見かける標識(駐禁とか速度とか)の類は設置されていない。バイクや車が走行出来ないのだから、設置されていなくて当然なのだ。 ところが、甲子峠の登山道には何故かR289の国道標識が設置されている。車はおろかバイクすら走ることができない登山道に、ライダーやドライバーに情報を与えるために設置される標識が、しかも国道標識が設置されているというのだ。分断区間を結ぶ連絡登山道は、日本のあちこちに存在するのだが、国道標識が設置されているのはここだけだろう。 |
●国道289号線 |
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■福島県白河市〜福島県西白河郡西郷村【レポートは福島県白河市街→甲子温泉方向です。】 |
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福島県白河市内でR4からR289に入ると、R289は福島県 西白川郡西郷村を横断しながら新潟方向に進む。道は整備・改良が進んでおり2車線道が続く。途中にワインディング区間があるものの整備されているので、気持ちよく走ることが出来る。 新甲子温泉付近に来ると『3km先通行不能』と書かれた標識が現れる。こういう表示があると『あと3km通行可能』と解釈してしまうのが私の悪い癖だ。これで今まで何度か痛い目に遭っている。さすがにZRX1100だと無理は出来ないので、今回はキレのいい所までで引き返すつもりでいた。 新甲子温泉を過ぎると、R289は3ケタ国道ながら高速道路並みの快適道路となり山深い所に進んで行く。1車線道の狭路が続く3ケタ酷道であるR289旧道の南側を進む最近開通したBPだ。旧道とは別ルートで山をぶち抜いたコースで建設されている高規格道路で、高速道路並みの立派なTNが連続する。 TNを次々と通過して行く。やがて4本目の長い 安心坂TNに突入する。距離が長いので結構飛ばせる。出口に近づくにつれていろいろと警告看板が現れる。そして出口が見えて来たが、なんと出口から先の道がない・・・ この先はまだ建設されていないのだ。(注1) 出口を出て左への急カーブを曲がると、急勾配・急カーブの1.5車線道となって谷底に下る。BPTN完成で急造した連絡道のようだ。谷底で旧R289の1車線道路と合流し少し進むと甲子温泉に到着する。 |
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注1>> この地点(写真4の地点)、1999年9月当時は何もなかったのだが、甲子峠を越えるR289BPの建設工事が進んでおり、2003年頃は橋脚工事の真っ 最中でした。2007年頃には甲子大橋が完成しており、その先の甲子トンネルの建設が進んでいます。 |
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●国道289号線 <<登山道の国道標識>> |
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■勝花亭〜R289西郷村側端点【レポートは福島県白河市街→甲子温泉方向です。】 |
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R289は谷底でR289旧道と合流すると左折する。道なりに進んで行くと、そのまま甲子温泉『大黒屋旅館』の駐車場に入る。 道路から駐車場に入るのではなく、道路が広くなって駐車場となっているのだ。『国道』としては、そのまま駐車場を突っ切って奥に向かう。一番奥には『大黒屋旅館別棟・勝花亭』があり、ここから先はバイク・車での進入は不可能となっている。中央に置かれたベンチが進入防止のための柵代わりとなっている。ここからは歩いて進んで行く。 『勝花亭』を過ぎると、道幅は1車線幅の狭路だが路面はダートとなる。谷側にはガードレールも設置されている。少し急な勾配のある坂道を下って行くと、谷底に『甲子温泉』の温泉棟が見える。しばらく坂道を歩いて行くと、前方に何やら青い標識が見えてきた。お馴染みの「おにぎり標識」である。 ダート道は、阿武隈川の源流手前で終わっている。この端点付近にR289国道標識が設置されていた。2本のポールがあり、1本には2枚、もう1本には1枚という設置状態。あちこちで国道標識を見てきたが、かなり乱雑な設置方法だと感じた。持って帰るのが面倒なので、余った標識をまとめてここに設置したかのような立て方だった。 |
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■R289西郷村側端点〜登山道標識【レポートは福島県白河市街→甲子温泉方向です。】 |
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R289西郷村側の国道端点は、阿武隈川源流を渡る橋の南詰となる。ここからは登山道(登山国道)となるのだ。橋は人一人分ぐらいの幅しかないコンクリート製の橋。長さは10mぐらいだろうか。清流を渡ると人一人分の道幅しかない登山道に入った。 登山道を歩き始めるとすぐにコンクリート製の階段を上る。階段を上ると青色に塗られた小屋(倉庫?)横に出、石や岩の破片が転がる登山道が始まる。小屋を過ぎると、青い逆三角形をした標識が視界に入る。そう、これが有名な登山道の国道標識である。 設置場所は登山道の端。ここだけ何気に道幅が広くなっている。周囲との景観を考慮してか、標識は木の柱に設置されており、さらに基部はΠ字型の柱で補強されている。もちろん標識の国道番号は『289』。この登山道が国道289号線として認定されていることを証明している。 付近は深い山中。登山道なので、バイク・車が走ることは不可能な道だ。そんな道に設置された国道標識・・・。登山者か私らのような者にしか注目されない標識だが、登山国道が存在することを示してくれている。 |
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<<MEMO>> |
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JAFの会報で存在を知って、ネットで資料を集めて現地を訪れたのは1999年(平11年)9月のこと。現地を訪れて現物を見た時は思わず笑みがこぼれました。人しか歩けない登山道に標識が立っているのが妙におかしかったのです。この標識のためだけに36枚フィルムを1本使い切っています。 現在建設中のR289甲子峠道路のうち、甲子峠を越える甲子トンネルは、2008年(平20年)の開通を目標に建設工事が進められています。そうなると現在の登山国道は国道指定を解除され、この標識も撤去されるものと思われます。この風景を見ることが出来るのもあと1〜2年ぐらいのようです。カメラに納めるのはお早めに・・・ なお、冬期(11月〜4月)は積雪が相当あるので通行は不可能でしょう。4月中旬〜11月上旬しか見ることが出来ないようです。また冬期は旅館『大黒屋旅館』も休館となりますので、ご注意下さい。 |
●R289甲子道路の概要 「なんのこと?」と思われるかも知れませんが、読んでそのままの意味です。”巨費を費やして建設したバイパス道路が廃道になる”予定なのです。正確には一部区間ですけど。 とりあえず概要から説明します。 甲子(かし)峠を越えるR289バイパス(甲子道路)の工事は、1975年(昭50年)福島県側の第一工区(L=約5.8km)から開始されました。(ちなみにその後は、1990年(平2年)度に第四工区、1995年(平7年)度に第二・第三工区の工事が開始されています。) もっとも早く事業が開始された第一工区でしたが、同区間が供用されたのは1995年(平7年)6月16日のこと。事業着工から実に20年もの歳月がかかったことになります。 山中に建設された道路なので、6つのトンネルと5つの橋が建設されました。それらを福島県白河市寄りから列挙すると・・・ |
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【剣桂トンネル】 | 第1・第2剣桂橋 | 【きびたきトンネル】 | 第1片見橋 | 【片見トンネル】 | 第2片見橋 | 【石楠花(しゃくなげ)トンネル】 | 縞石橋 | 【縞石坂トンネル】 | 【安心坂トンネル】 |
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・・・となります。あめふらし@管理人が同区間を走ったのは1999年(平11年)9月のこと。供用開始後約4年後のことになります。 最後の安心坂トンネルの新潟県寄りに、第二工区となる甲子大橋と続いて甲子トンネル(L=4345m)が建設されています。 この甲子トンネルは2006年(平18年)8月に無事貫通。2008年(平20年)の供用開始を目指して建設が進められています。 この甲子トンネルが開通すれば、先に開通している第一工区区間も含めて快適な2車線道が登場するはずでした・・・。 |
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●バイパス一部廃道に・・・ 事態が急変したのは2002年(平14年)夏のこと。この年の7月9日から日本列島に接近した台風6号によって停滞する梅雨前線の活動が活発化。東北以南の各地に大雨や洪水、土砂災害を発生させました。東北地方には10日晩〜11日昼にかけて再接近。東北の太平洋岸を北上しました。このときの大雨による地下への雨水の浸透により、地下深くにおいて地層のずれが発生。このあおりをくらってR289甲子道路の石楠花トンネル内のコンクリ壁に亀裂や剥離が発生。ボーリング調査の結果、道路地下約70m付近の地層でずれ(地滑り)が発生し、地表付近の地盤が約3haにわたって歪んだことが原因でした。 トンネル内部のコンクリ壁を補強して使用することを検討したものの、地盤そのものが歪んでいることから危険と判断。石楠花トンネルを含む約600mのバイパス区間は放棄(廃止)され、代わって南側に全長約900mのトンネルを建設することになったのです。(ヨッキれんさんのHP『山さ行がねが』より) 放棄(廃止)されるのは、【きびたきトンネル】の途中−第1片見橋−【片見トンネル】−第2片見橋−【石楠花トンネル】の約600mの間。供用開始後、たったの7年ほどで通行できなくなり廃止されることなったのです。その代替トンネルは、【きびたきトンネル】の途中から分岐して今の【石楠花トンネル】新潟県側抗口付近に坑口が出てくるようになるそうです。そのあたりのレポートはヨッキれんさんのHPに詳しいので、そちらに譲ることにします。 なお、現在(2007年)時点では、この代替となる新トンネルは開通しておらず、【剣桂トンネル】〜【石楠花トンネル】間は通行止めとなっており、旧道に誘導されています。甲子温泉へは旧道経由で行くことが出来るので、登山道標識を見ることは可能です。 |
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1999年(平11年)9月の東北ツーリングで甲子温泉に向かう途中に撮影したR289甲子道路。白河市→甲子温泉方向を撮影。手前から第1片見橋−【片見トンネル】−第2片見橋−【石楠花トンネル】。この場所はすでに一般車両の通行は出来ません。数年後の代替ルートの完成をもって廃道となります。 一時的な迂回路として建設されたバイパス道路が、正式バイパス完成により廃道となることはありますが、正式バイパスが完成後(しかも数年で・・・)に廃道となるのは異例です。あめふらし@管理人の知っている限りでは、R289甲子道路が最初です。 |
>>国道289号線甲子峠 終わり |
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