国道260号線旧道(棚橋隧道〜錦峠旧道)

 

●概況

 国道260号線は紀伊半島南東の海岸線を通っているが、リアス式海岸が続く険しい地形のため狭路や悪路が多かった。これを解消するため、道路改良工事やBP建設工事が行われ、あちこちでバイパスが開通している。

 最後まで残ったのは棚橋隧道〜錦峠間だったが、ついにBPが開通した。

●取材DATA

>>走行日:各項参照

>>走行方向:各項参照

>>レポート記述方向:各項参照

●変遷・沿革

 国道260号線は、1963年(昭38年)4月に誕生した3ケタ国道。伊勢・志摩半島の三重県志摩郡阿児町 (現:志摩市阿児町)から三重県内の海岸線をウネウネと進みながら三重県北牟婁郡紀伊長島町(現:北牟婁郡紀北町紀伊長島区)までを結んでいる。起点終点共に三重県内で終わっている『三重県国道』である。

 三重県南東部〜南西部の海岸線はリアス式海岸が続く。かつてのR260もウネウネと狭路でいくつもの山を越えて進んでいた。かつては三浦峠や三重県南島町 (現:南伊勢町)の海岸線区間や小方峠などの難所が存在していたが、その多くが次々に整備・改良され、今では快適な道路に生まれて変わっている。現在、これらの難所を越えていたかつての本道が、旧道となってあちこちに残っている。

●状況

 BPやBPTNの供用開始により、多くの旧道が誕生している。それらの多くは町道などに格下げされ、生活道路として余生を送っている。三浦峠越え区間のように走る車もほとんどなくなり荒れて行く道もあれば、錦峠旧道の西半分のように崖崩れが発生して復旧されずに廃道状態になっている区間もあるなど、その余生は様々だ。残念ながら、これらの旧道区間は調査走行を行っていないので、どういう状態かは不明である。

 現時点(2004年6月時点)では、伊勢南島TNの供用開始となった錦峠〜棚橋隧道経由の区間のみのレポートとなります。

◆Update:2005年10月10日

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国道260号線錦峠道路旧道

概況/R260錦峠道路旧道/R260棚橋隧道ルート旧道<<現役国道時代>>

R260棚橋隧道ルート旧道<<紀勢南島TN開通後>>/棚橋竈地区

○国道260号線錦峠道路旧道

  【概況】

●沿革

 三重県度会郡南島町と同郡紀勢町を結ぶ区間は、棚橋隧道と錦峠を含む、見通しの悪い狭路が延々と続く難所区間となっていた。道路を改良しようにも拡幅困難な地形のため、別ルートでのBPが建設されることになった。

 1984年(昭59年)度より、全長約6.7kmの『R260錦峠道路』の建設が開始。1996年(平8年)度にr68(県道紀勢インター線)〜錦第三橋間(1.1km)、2000年(平12年)度に紀勢町中河内地区(0.9km)が部分供用された。

 紀勢南島TNを含む区間は1997年(平9年)度より工事が開始され、2002年(平14年

)8月に取り付け道路とTN部分を含む3.3kmが暫定供用された。 2004年(平16年)6月時点で、錦峠道路は未開通であり部分供用となっている。将来的には錦TN・紀勢南島TNという二つのTNを含む全長6.7kmの高規格道路となる予定である。

●現状

 2004年(平16年)6月時点ではR260錦峠道路が全線供用開始されていない。それゆえ従来の錦峠・棚橋隧道経由の狭路区間は国道指定を解除されておらずR260として存続している。この区間には2ルートのR260が存在することになる。

 従来ルートのR260(以下R260旧道と表記)のうち、最初に改良された区間はr68錦望TN北側付近〜R260錦峠道路錦第三橋の区間(錦峠越え)。R260錦峠道路(以下R260BPと表記)の錦橋の向かいに見える、山腹をウネウネと進んでいるのがR260旧道である。(注1) 聞くところでは1〜1.5車線幅のブライドカーブの連続する狭路が延々と続く悪路だったそうだ。BPルートの暫定供用が開始された後も、しばらくは通行可能だったそうだが1998年(平10年)頃に路肩崩壊か崖崩れによって通行不可能となり、現在に至っている。立派なBP道路が完成しているので、そのまま廃道となる可能性が高い。

 その次は紀勢町中河内地区となる。錦の町外れから錦TN(建設中)手前までの区間で、ここも端点は急勾配の連絡道路でR260旧道に接続している。旧道ルートは町中から急勾配の狭路坂道でウネウネと進んでいるが、今でも生活道路として機能しており通行可能である。

 そして3番目に改良されたのが、紀勢南島TNと重なる棚橋竈〜r68分岐点の区間である。途中にある棚橋隧道は幅約2mの背の高い逆Uの字型をした隧道。もとは1893年(明治26年)頃に開通した隧道だそうだ。当然トンネル内部でのすれ違いは不可能であり、交互通行(早く入った者勝ち)という状態で、大型車の通行も不可能な状態だった。棚橋隧道は紀勢南島TNの暫定供用開始により、実質的に役目を終えたことになる。幸いなことに2003年11月走行時点では通行可能となっていたが、これからは通る車も少なくなり、隧道本体の老朽化などにより通行止めとなる可能性も捨てきれない。

明治生まれの棚橋隧道(紀勢町側抗口)。ご覧の通り幅の狭い隧道。現役国道時代の2000年10月に撮影。↑

注意1:錦第三橋と従来ルートとは急勾配の連絡道路で接続している。厳密に言えば、この区間において、R260旧道とR260錦峠道路とは接続していない

     ことになる。

○国道260号線錦峠道路旧道

  錦峠旧道

 錦峠越えのR260旧道は、紀勢町錦地区〜R260BP連絡道路分岐点〜r68分岐点の区間となる。このうち南半分となる錦地区〜連絡道路分岐点までは現役の国道となっているが、連絡道路分岐点〜r68分岐点の区間は一足早くに実質的に旧道と化した。

 谷を一気に跨ぐ錦峠道路の錦橋から、向かいの山腹をウネウネと進む白いガードレールが確認出来る。これがR260旧道である。1〜1.5車線幅の狭路がウネウネと続く酷道であると予想される。しかし1998年(平10年)頃に大規模な崩土が発生したため通行止めとなっており、現在のところ通行はできない。

 立派な高規格道路のBPが完成しているので、復旧工事をするだけ予算の無駄ということだろうか?復旧工事が行われいる様子もなく、2003年11月に現地を訪れたときも通行止めのままであった。

1.南側の旧道分岐点。左に分岐する狭路が旧

 道。直進するのがBPへの連絡道路。

2.北側分岐点。左の2車線道がr68。右の狭い

  2車線道がR260旧道となる。

3.分岐点のゲート。ご覧の通り『通行止』となって

  いる。進入は控えましょう。

>>写真は全て2000年10月撮影

○国道260号線錦峠道路旧道

  【棚橋隧道経由ルート】

【レポートは三重県紀勢町(現:大紀町)→三重県南島町(現:南伊勢町)方向です。】

現役国道時代

 

 r68錦望TN北側にあるr68との合流地点からは整備された2車線道で北に向かう。500mほど進むと2車線道から右側に1.5車線幅の狭路が分岐するT字交差点に到着する。ここがR260とr68分岐点となる。3ケタ国道よりも県道の方が立派な道なのだ。

 典型的な3ケタ国道の分岐交差点を右折する。ここからは棚橋峠越え区間。道は1.5車線幅となり山中に進んで行く。最初は緩やかなカーブが連続するが、しばらく行くと道幅は1車線幅となり徐々に山深い所に入って行く。急勾配・急カーブも出現し始め、ついに3ケタ酷道区間に入る。

 3ケタ酷道区間は舗装された1車線幅なのだが路面状態は荒れている。車同士のすれ違いは少し難しい道幅だ。ウネウネした1車線道を走ると、やがて幅の狭いトンネルに到着した。これが棚橋隧道だ。隧道内は乗用車一台が入れば一杯となるほどの幅しかない。先入車優先の隧道だ。反対側の抗口が見えるので長くはないのだが、対向車が来るとバイクであっても離合は困難となるので、来ないことを祈って隧道内に入る。内部は素堀のままで表面をコーティングしただけである。漏水が多く水が滴り落ちていた。対向車は来なかったので無事に隧道を抜けることが出来た。隧道を抜けると三重県 度会郡南島町(現:度会郡南伊勢町)である。

 南伊勢町側のR260も度会郡紀勢町(現:度会郡大紀町)側と変わらず1車線幅の酷道区間が続く。急勾配・ブラインドカーブの連続する山道を下って行くことになる。所々1.5車線幅となっているので車同士でのすれ違いは比較的楽なようだ。その途中で 紀勢町方面に向かう中型トラックとすれ違ったが、棚橋隧道を抜けることが出来たのだろうか?

 やがて集落が見えてきた。緩やかな坂道を下り終えると棚橋竃(たなはしがま)に到着。鉄製ゲートを過ぎると集落ないに入り、R260の難所である棚橋峠を越えた。

1.R260棚橋隧道へは、この先のT字交差点を

  右折する。直進はr68でR42へ向かう。

  (r68錦望TN方面より撮影)

2.右折すると、1.5車線幅の狭路に入る。山中

  へ向かう狭路・・・。いかにも3ケタ国道らしい

  風景。

3.やがて1車線幅の狭路に。そんな所にR260

  国道標識が立っていた。これまた3ケタ酷道ら

  しい風景。古いタイプの標識でした。

4.幅約2mの棚橋隧道を越える。ご覧の通り、

  隧道内での離合は不可能。

  (棚橋隧道南島町側抗口を撮影)

5.南島町側は狭路のワインディング区間。クネ

  クネと見通しの悪い道が続く。

  (南島町→紀勢町方向を撮影)

6.棚橋竈まで下ってくるとホッとする。この先でB

  Pの建設現場を越えて棚橋竈の集落内を通り

  抜けて行く。

   

7.棚橋隧道区間の入口には鉄柱製のゲートが

  あった。 今は撤去されている。

  (南島町→紀勢町方向を撮影)

   

●DATA

>>走行日:2000年10月21日

>>走行方向:三重県紀勢町(現:大紀町)→三重県南島町(現:南伊勢町)

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