国道173号線一庫ダム旧道(2) |
■知明湖水没旧道 ■龍化隧道周辺 |
○国道173号線旧道 【一庫ダム旧道】 |
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【レポートは兵庫県猪名川町民田→兵庫県川西市一庫方向(北→南方向)です。】 |
■旧道入口〜(湖岸道路)新龍化TN |
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ダム本体周辺は完全に水没してしまっているが、一庫ダムによって出来た知明湖北部になると旧道の痕跡がはっきりと残っているのが確認出来る。渇水時期には圓山隧道付近から北側の旧道が姿を現すようだ。 さて現R173を走り、新円山TNを出て円山大橋を渡るとき、川沿い(湖沿い)に進む狭路が確認出来る。この道は旧道ではなく、湖岸道路(周遊道路)で湖の管理道。その下にある道らしきものが旧道である。この旧道については湖岸道路を北に進むにつれてはっきりと痕跡を認めることが出来る。 旧道入口となるのは、兵庫県川辺郡猪名川町民田。R173から民田地区を横断してr603(能勢猪名川線)を結ぶ町道(?)分岐点の一つ南にある、篠山市福住→池田方向車線(南行き車線)から左に分岐している交差点。『←千軒キャンプ場』、『←龍化つり橋』という案内が設置されている。 この交差点を左折すると、1.5車線幅ぐらいの平坦な狭路となって数軒の民家の中を抜けて行く。大路次川の流れに沿って緩やかな右カーブを曲がると、現R173の民田橋をくぐる。 くぐると右側に民家が2軒並んでいる。その正面付近の道路左側に緩やかな斜面があって川原に下りて行くのが確認出来る。どうやらここから旧道が分岐していたようだ。30mほど進んで道路から左下を見てみると、草木に覆われていながらも平坦な道路らしき構造物が残ってい |
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るのが確認出来る。旧道はすでに自然に還ってしまっており通行不可能状態であった。ここからは1.5車線幅の湖岸道路を走りながらの確認となる。 この先、湖岸道路は緩やかな左カーブを描いて進んで現R173の千軒橋をくぐる。この付近から湖岸道路左下には遊歩道(川原公園?)が続くようになる。旧道をそのまま整備したような感じの造りだ。千軒橋をくぐって少し進むと見通しの悪い右カーブが現れる。ここが旧道(遊歩道)との唯一の交点。旧道(遊歩道)の一部が駐車場となっており、かつての旧道上に下りることが出来る。駐車場から先も遊歩道が続くが、入口にはゲートが設置されているので、ここから南へはバイク・車での進入は出来ない。 カーブをクリアして湖岸道を淡々と進み、現R173の龍化橋をくぐる。すると川沿いの旧道(遊歩道)が結構下を走っていることが分かる。どうやらこの付近から湖岸道路は標高を上げて行くようだ。やがてつり橋である「龍化橋」西詰に着く。満水時はこの付近から南は完全に水没するそうだ。標高を稼いでいたのはそういうことがあるからなのだ。 「龍化橋」を過ぎて緩やかな左カーブを過ぎると、正面にコンクリート製のトンネル抗口が見えてきた。湖岸道路の新龍化トンネルだ。このすぐ左下に旧道の龍化隧道がある。 |
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<<MEMO>> |
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■概況・交通量など 分岐点から現R173民田橋付近までが純粋なR173旧道であろうと考えています。橋を過ぎた付近から、旧道は川岸に下りて遊歩道(一部廃道)となり南に進んでいくようです。徒歩以外は進むことは不可能なので、バイク・車の場合は湖岸道路を走りながらすぐ下にある旧道(遊歩道)を確認することになります。 旧道は全線に渡ってコンクリート製の柵が設けられています。しかも木目調になされており景観に配慮しているようです。路面は一部コンクリ舗装されていたりしますが、昔のままと思われるアスファルト舗装も見られ往事を偲ばせています。 龍化つり橋より南側は水没するようなので、路面には土砂がゴミが積もっているので歩く場合は足下に注意して下さい。 湖岸道路ですが、見通しの悪い区間が続きます。まれに車が走っていることがあるので、対向車には注意して走って下さい。 ■注意点 水没時、また大雨や川の増水時は大変危険なので、旧道(遊歩道)には進入しないで下さい。冬期は路面凍結・積雪があるので湖岸道路の走行には注意が必要です。 また場所が場所だけに、夕方以降は治安が悪化するようなので注意して下さい。 |
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●走行DATA |
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知明湖水没旧道 【北→南方向を走行】 >>走行日:2004年2月17日/05年8月26日 |
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取材協力(同行走行)>>satounoさん(2004.02.17) |
○国道173号線一庫ダム旧道 【龍化隧道周辺】 |
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【レポートは兵庫県猪名川町民田→兵庫県川西市一庫方向(北→南方向)です。】 |
■龍化隧道 |
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湖岸道路の新龍化TN(現R173とは別トンネル)の左下にある素堀トンネルが『龍化隧道』。湖岸道路から見ると洞窟のような感じを受けるが、実際に遊歩道(旧道)に下りて見てみると『隧道』であることは一目瞭然だ。隧道の幅は狭い2車線ぐらいあり、長さは30mほど。短い隧道ではあるが、現R173が開通するまでは現役の国道として使用され、ここを路線バスが走っていたというのだから驚きである。 >>龍化隧道の歴史 1886年(明治19年)頃に大阪府道丹州街道が完成するが、当時の大路次川沿いの道は山峡を縫うように進む一本道であった。特に現在の川西市民田の東部にある山間部(雨森山東北山麓付近)を行くいわゆる『千軒道』は大雨になると川水があふれ、道路はたちまち通行不能になっていた。そのさまは「竜」のごとく暴れまくる状態で、落命する人も出たほどであった。 そこで1915年(大正4年)、大阪の商人である植村治郎兵衛が私財をなげうって民田地区の山麓にトンネルを掘ることを決意した。ところが事は容易ではなく、トンネルを掘る山の岩石が堅硬であったため難工事となってしまった。工事を進めるために爆薬や工具類を多数購入する必要に迫られたが、時あたかも第一次世界大戦の真っ最中ということで、爆薬工具類などの値段が高騰していた。そんな状況下でも植村氏は諦めず、私財のほとんどを費やし、延べ8000人あまりの作業員によって191 6年(大正5年)冬に完成した。これが『龍化隧道』である。 この植村氏の功績を表彰し、枳根荘村と西郷村(共に現:大阪府能勢郡能勢町)は龍化隧道の南側抗口横に記念碑を建設し |
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た。以来、龍化隧道は丹州街道の重要なトンネルとして機能する。通る道も府道丹州街道が戦後になって地方主要道池田篠山線となり、さらに1963年(昭38年)4月に国道173号線に昇格しても、その効果をいかんなく発揮していた。 しかし一庫ダム建設が始まると龍化隧道は将来水没することが決定的になる。1981年(昭56年)10月のR173付け替え路が完成し国道はそちらに変更になる。それを待っていたかのように、翌11月から試験湛水が始まり、ついに龍化隧道は水没してしまった。完成から約65年でその役目を終えたのである。なお、記念碑は現在の湖岸道路新龍化トンネル南側抗口横に移設されている。 |
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【写真】:湖岸道路の新龍化TN南側抗口のすぐ横に移設された記念碑。 植村氏の偉業を伝えている。(2005年8月撮影) |
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参考資料>>能勢町史 |
■龍化隧道探索(2004年2月) |
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最初に訪れたのは2004年(平16年)2月中旬。冬期だがダム湖は満水ではなく、龍化隧道付近から水の流れはなくなりどんよりと貯まり始めている状態だった。湖岸道路から階段で川岸のR173旧道(遊歩道)に下りることも可能だったので下りてみる。付近の旧道(遊歩道)の道幅は狭い2車線ぐらいある。上流方向より大路次川の右岸をウネウネと続いてきた旧道(遊歩道)は龍化隧道から水没していた。最近まで水没していたのか、付近の路面には土砂やゴミが堆積している。 遠くからでも龍化隧道の存在ははっきりと確認できる。湖岸道路のコンクリ製トンネルである『新龍化トンネル』のすぐ左下にある。路面に注意して注意深く進んで行くと龍化隧道の真ん前に着く。ここからは危険なのか、柵が設置されており進むことができない。それ以前に、ここから先は水没しているのでどっちにしろ進むことは出来ない。 柵越しに隧道を観察。路面はコンクリ舗装なのか土砂が堆積しているのか分からない状態。長さは30mほどで、隧道の幅は狭い2車線ぐらいある。内部が崩壊したようすなく、隧道内には大きな岩石などは見られない。内部は素堀のままで、おそらく開通当時の姿のままだろう。南側抗口は湖岸道路上から確認しただけだが、抗口が崩れることなく原型を保ったまま水没しかけている。湖面の水の濃さからして結構貯まっているようだ。 周囲の岩の斜面を見る限り、隧道自体が完全に水没することはないようで、ピーク時でも半分ぐらいまでしか水に浸からないようだ。ダムの渇水期にはその姿を完全に見せ、隧道内部の通り抜けも可能のようだ。しかし、今の状態では通り抜けることは不可能なため、周囲からの視認だけで調査を終えた。 なお、湖岸道路の新龍化TN南側抗口横には『龍化隧道』の開通記念碑が移設されて立っている。 |
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■龍化隧道探索(2005年8月) |
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2005年(平17年)8月下旬、ふらりと現地を訪れた。渇水期の状態を見てみたかったからだ。この時期は水の需要期だけあって、一庫ダムの水位はかなり下がっている。前回2004年2月に訪れたときは、隧道付近から水の流れはなくなっていたが、05年8月は川の流れが復活し、心地よい音を響かせて水が流れていた。鮎釣りを楽しむ釣り人までいる。ダム湖となった大路次川は一時的にせよかつての姿を取り戻しており、『龍化隧道』も一時的にせよかつての旧道隧道の姿を取り戻していた。 今年(2005年)の満水時がどこまで水没したのかは不明だが、ラインから察すると隧道が完全に隠れるほどの高さだったようだ。2005年6月にR173を北上することがあったのだが、その際に円山大橋上から見た時、かなりの水量が貯まっていたのを確認している。 さてR173旧道(遊歩道)に下りてみる。夏真っ盛りの時期なので、周囲は夏草が生い茂っていた。前回の時とは対照的な色のある風景が広がっている。隧道北側抗口前に近づく。素堀隧道はぽっかりとその抗口を開けている。天井にクマバチかスズメバチが巣を作っている以外、特に変化はない。内部は水はなくカラカラに乾いた路面がむき出しになっており、反対側にも草地が広がっていることが確認できる。 本来ならここまでなのだが、今年の水没時の影響か誰かが倒したのか、抗口前に設置されていた柵の一部が倒れていた。人一人分ぐらいの幅があり、簡単に隧道内に入ることが出来るようになっていた。誘惑に負けて進入する。もちろん、ここからは自己責任である。落盤事故にあったりハチに刺されても文句は言えない。 隧道内部は意外と広い。狭い2車線ぐらいの幅があり、高さも15mぐらいある。『能勢町史』の記述によると、隧道完成時は長さが約36mで高さは約4mとある。『龍化隧道開通式典』の写真(能勢町史掲載)をみると、隧道抗口の高さは大人の2倍ぐらいしかなく、記念碑(最初は南側抗口横にあった)と同じぐらいの高さである。いつごろかは不明だが、後年に隧道内部の高さを上げたようだ。 隧道内部の壁や天井は素堀そのまま。表面をコーティングした形跡はなく、岩石がそのままむき出しになっている。岩石が硬いためか崩壊などは起きておらず、小さな石程度の物が転がっているぐらいで路面上には岩石は転がっていない。ただよく見てみると中央部付近の天井部分の一部には亀裂が入っており、落盤してもおかしくない危険な状態になっていた。 路面はコンクリート舗装されていた。しばらく水没していたため土砂が堆積しているが、歩行困難というほどではなくコンクリートの継ぎ目が識別できるぐらい少なかった。路肩には一部水路が設けられていた。 30mほど歩くと南側抗口を出る。04年2月訪問時は水没していた地点だ。南側抗口は、北側と比べると若干幅が広く高さが少し低いように感じられる。一庫方面(下流から)来た場合、左カーブの出口に抗口があるため、すれ違いなどを考慮して広くとられたのだろうか。単に岩石の硬さが関係しただけかも知れない。 ここより南の旧道も姿を現していたが、抗口すぐの橋か道路が崩壊していたので渡らず、調査を終えて引き返した。 |
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■龍化隧道以南 |
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龍化隧道以南もR173旧道(遊歩道)は大路次川右岸に沿って続いている。現R173円山橋近辺までについても、満水時は水没するようで、姿を現すのは渇水期の夏だけのようだ。2005年8月の訪問時、隧道南口から続く旧道(遊歩道)が確認できた。道幅は1.5〜狭い2車線ぐらい。夏草で覆われていたので路面状態はよくわかならいが、一部は舗装が残っていそうだ。 現役時代の基礎と橋がそのまま利用されているのも確認できた。 現R173円山大橋をくぐると、R173旧道(遊歩道)は湖岸道路から離れてしまう。湖岸道路がやや南寄り、旧道がやや北寄りのカーブを描くためだ。少しの距離だけ見通しが悪くなる。つぎに湖岸が見えてきた時には旧道(遊歩道)の姿はなくなっていた。 2004年2月の時は水没しており、痕跡は全く見つけられず。05年8月は水はないが、旧道がある付近は堆積物で覆われており痕跡を見つけ出すのは困難な状態であった。 どうやら知明湖の水没したR173旧道(遊歩道)を確認出来るのは円山大橋付近までのようである。 |
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<<MEMO>> |
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■概況 『龍化隧道』は知明湖(ダム湖)が満水になると水没します。姿を確認出来るのは渇水期前後ぐらいです。毎年、完全に水没するようではなく年によっては抗口近くまで近づくことができます。 湖岸道路から旧道(遊歩道)に下りる階段がありますが、幅が狭くて急斜面なので注意して下さい。下の方は土砂が積もっていたりします。また旧道(遊歩道)も水没時に溜まった土砂が堆積しているので、足下には注意して下さい。 ■注意点 探索する際は周囲の状況をよく見極めて下さい。できれば複数人で探索することをお勧めします。 大雨時は大変危険です。水量がいきなり増えて流されることがあるので、訪れない方が無難です。 |
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●走行DATA |
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龍化隧道周辺 【北→南方向を走行】 >>走行日:2004年2月17日/05年8月26日 |
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取材協力(同行走行)>>satounoさん(2004.02.17) |